スマートフォン1台で商品の情報収集や購入が簡単にできるようになる一方、店舗売上を伸ばす方法に悩む方も多いでしょう。
店舗売上を拡大する「店舗マーケティング」とは?
店舗マーケティングは、店舗の売上向上を目的として実施する一連のマーケティング活動です。
近年は競合が激化し、魅力的な商品でも店頭販売だけでは売上が伸びにくくなっています。顧客に選ばれるには、店舗での体験価値の提供や購買意欲を高める戦略が欠かせません。
店舗売上を構成する要素
店舗売上を構成する要素は、主に3つあります。それぞれの要素について詳しく解説します。
来店客数
来店客数とは、店舗に来た顧客の人数を指し、新規顧客とリピート顧客に分けられます。来店客数には、商品やサービスの未購入も含みます。売上向上に直結する重要な要素で、陳列やディスプレイを工夫しても、来店客数が少なければ売上は伸びません。
購買率
購買率とは、来店した顧客のうち、実際に商品やサービスを購入した顧客の割合を指します。来店客数が多くても、購入につながらなければ売上は上がらないため、購買率を高めることが重要です。
平均客単価
平均客単価とは、顧客1人あたりが1回の買い物で支払う平均額を指します。平均客単価を高めることで、来店客数が少ない場合でも売上の向上が可能です。
通常は、過去1年間の取引データをもとに算出します。
店舗売上の分析に役立つ2つの手法
店舗売上の分析に役立つ手法は、主に2つあります。以下で、ABC分析とRFM分析について解説します。
ABC分析
ABC分析とは、商品の重要度をA・B・Cの3段階に分けて分類する分析方法です。売上構成比をもとに、累計で0~70%をA、70~90%をB、90~100%をCとランク分けします。しきい値は業態や目的に応じて可変(例:Aを80%とするなど)に設定可能です。重要度の高い商品に注力することで、効率的に売上を伸ばすことが期待できます。ABC分析の手順は、以下の通りです。
- 各商品の売上データを収集する
- 各商品の売上構成比を算出する
- 累計売上構成比に応じてA・B・Cに分類する

RFM分析
RFM分析とは、顧客を「Recency(最終購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(購入金額)」の3つの指標でグループ分けして分析する手法です。R・F・Mがすべて高い顧客は優良顧客、すべて低い顧客は非優良顧客と分類できます。
これにより、非優良顧客への無駄なプロモーションを減らし、優良顧客には特別施策で購買を促す効率的なアプローチが可能になります。優良顧客に優先的にアプローチすることで、売上の向上が期待できます。RFM分析の手順は、以下の通りです。
- 課題を明確化し、仮説を立てる
- 顧客の購買データを収集する
- 集計データを3指標で分析・ランク分けする
- 顧客分類に応じた施策を立案・実行する
- 効果検証を行う
顧客セグメント別の施策例

| 顧客タイプ | R・F・M | 特徴 | 推奨施策 |
|---|---|---|---|
| 🌟 優良顧客 | 高・高・高 | 最重要顧客層。継続的に高額購入 | VIP待遇、限定商品案内、パーソナライズサービス |
| 💎 高額顧客 | 高・中・高 | 購入単価は高いが頻度は中程度 | 購入頻度向上のための特典、定期購入の提案 |
| 🔄 ロイヤル顧客 | 高・高・中 | 頻繁に購入するが単価は中程度 | アップセル・クロスセル、まとめ買い促進 |
| 🆕 新規優良客 | 高・低・高 | 最近高額購入したが初回または少数 | フォローアップ、次回購入インセンティブ |
| 💤 休眠予備軍 | 低・高・高 | 過去の優良顧客だが最近離脱傾向 | カムバックキャンペーン、原因ヒアリング |
| 😴 休眠顧客 | 低・低・中 | しばらく購入がない元顧客 | 再活性化メール、特別割引オファー |
| ⚠️ 非優良顧客 | 低・低・低 | 購入実績が少なく収益貢献も低い | コスト最小限のアプローチ、セグメント除外検討 |
店舗売上を上げるための施策
店舗売上を上げるためには、あらゆる施策を打つ必要があります。代表的な施策をピックアップし、解説します。
来店客数を増やす施策
来店客数を伸ばすには、お店の存在や魅力を広く伝える施策が欠かせません。具体例としては以下のようなものがあります。
- Web広告の出稿
- 自社サイト、SNSの運用
- Googleマップへの登録、MEO対策
- フリーペーパーへの広告出稿
- クーポンの発行
- ポスティング
- プレスリリース
- 看板、POPの設置 など
来店客数を増やす方法はさまざまありますが、費用を抑えるならSNS活用が効果的です。
購買率を上げる施策
購買率を上げるには、来店客が商品に触れやすくし、購入意欲を引き出す売り場づくりが重要です。具体例としては以下のようなものがあります。
- 店内のレイアウト・陳列方法の変更
- 商品価格の見直し
- POPの設置
- 商品ラインナップの変更
- ポイントマーケティングの実施
- 決済方法の追加 など
回遊しやすく商品配置が分かりやすい売り場は、買い物のしやすさを高め、購入のきっかけを作ります。さらに、販売重点商品を目立たせたり、魅力を視覚的に伝えるディスプレイを活用したりすることで、購買意欲を高めやすくなります。
平均客単価を上げる施策
アップセル
アップセルは、より高額な商品の購入を提案する施策です。人気商品の代わりに、より高価格の商品を選んでもらう工夫が求められます。具体例としては、Webサービスやサブスクリプションの上位プランへの変更などがあります。
アップセルでは、顧客の悩みや要望を把握し、それに合った魅力を伝えることが重要です。高価な商品でも納得してもらえれば、顧客満足度と売上向上の両方につながります。
クロスセル
クロスセルは、関連商品を提案することで一緒に購入してもらう施策です。クロスセルは関連商品を提案する点でアップセルと異なります。たとえば、ハンバーガーの購入時にドリンクセットを勧めたり、ECサイトで購入履歴から関連する飲料をレコメンドしたりする方法です。新規顧客を増やさずに低コストで売上を伸ばせます。
店舗売上の向上に必要なポイント
店舗売上を向上させるには、押さえておくべきポイントがあります。5つのポイントを解説します。
新規来店顧客の獲得
店舗売上を向上させるためには、新規来店顧客を獲得することが重要です。獲得が難しい場合は、新商品の開発や広告の活用、SNSマーケティング、特別なイベントの開催などの施策を行いましょう。マーケティング戦略の見直しやターゲット層の分析なども必要です。
既存顧客の流出防止
既存顧客の流出を防ぐことは売上維持のために重要です。流出が目立つ場合は、原因を分析して適切な対策を講じる必要があります。具体的な施策としては、既存顧客への販促活動、クーポンの発行、会員特典の提供などが挙げられます。顧客のフィードバックを積極的に取り入れ、サービスや商品の改善に活かすことも重要です。
リピーターの獲得
リピーターを獲得することは、売上を安定させるために重要です。1:5の法則では、リピーターの価値は新規顧客の約5倍とされ、安定した売上を支える重要な存在と考えられています。具体的な施策としては、会員登録の促進、ポイントシステムの導入、クーポンの発行などがあります。
客単価の向上
客単価を上げることで、売上の向上が期待できます。たとえば、1日あたり100人が来店する飲食店で、客単価が1,500円の場合、1日の売上は15万円です。客単価2,500円に引き上げると、1日の売上は25万円に増えます。具体的な施策としては、新商品の開発やセット販売などがあります。
商品単価の変更
商品単価を見直すことは、売上向上につながる重要な手段です。品質向上による単価引き上げは、高すぎると購買意欲が下がるため、相場を参考に慎重に判断する必要があります。一方、単価を下げて販売個数を増やし、より多くの顧客を集めることも可能です。価格を変更する際は、変更理由を顧客に明確に伝えることが大切です。
店舗売上の向上にはアプリが有効
店舗アプリは、店舗への集客や販促を目的に制作されたスマートフォン向けのアプリです。主な機能は、以下の通りです。
- 会員証機能
- ポイントカード機能
- クーポン機能
- プッシュ通知機能
- 商品予約機能
- 在庫確認機能
- 電子チラシ機能
- 顧客管理機能 など
店舗アプリを導入することで、顧客との接点を増やせるほか、満足度の向上や顧客育成、最新情報の提供、顧客データの収集・分析が可能になるなどのメリットがあります。ただし、アプリの導入には開発費用がかかり、定期的な更新も必要です。店舗の規模に応じて導入を検討しましょう。
アプリ利用で店舗売上向上につながった事例
東京都葛飾区東新小岩の人気ラーメン店「麺屋一燈」を手掛ける株式会社夢をかなえるさまは、都内直営4店舗、海外6店舗(台湾4店舗、ベトナム1店舗、バンコク1店舗、香港1店舗)を運営されており、食べログラーメン部門で全国1位(2018年9月)獲得など、人気の高いラーメン店さまです。
常連様の来店頻度がさらにあがっていることです。
ただ、それは特典のプレゼントなどの効果もあると思うのですが、それはそれで戦略が上手くいっているのかなという感じなので良いことだと思います。少しずつ売り上げもそれにあわせて上がってきていますね。
導入して日が浅いのでまだ大きくは上がっていませんが、1割~2割の間くらいの感じで伸びてきています。

まとめ
店舗売上を向上させるには、来店客数、購買率、平均客単価の3つの要素を意識した施策が重要です。新規顧客獲得や既存顧客の流出防止、リピーター育成、商品や客単価の見直しなど、さまざまな取り組みが売上向上につながります。また、店舗アプリを活用すれば、顧客との接点を増やし、販促や顧客管理を効率化できるため、売上向上に大きく貢献します。
